知っておこう、ドメインの常識。2024年版
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長くウェブ業界に居ますが、ドメインの取得や更新などは「適当にしときますわ」って感じでいつも終わらせてます。だいたいは.comや.jpくらいしか利用していないのですが、様々なドメインが出てきてたり、ルールが変わっていたりして、改めて勉強しておきたいと思いました。2024年現在のドメイン関連の新常識を調べてまとめてみました。
新しくできたドメインは1200以上
.TOKYOや.OSAKAといったドメインを取得できることが一時期ニュースにもなりましたが、こういった新gTLDとも言われるドメインは年々増え続けています。新しいものをいくつかピックアップしてみました。
gTLD | 用途 | レジストリ |
---|---|---|
.kids | 子供( April 2022) | DotKids Foundation Limited(香港) |
.music | 音楽(29 October 2021) | DotMusic Limited |
.spa | スパ、温泉、保養施設(17 October 2020) | Asia Spa and Wellness Promotion Council Limited(マレーシア) |
.inc | 法人(17 July 2018) | GTLD Limited |
musicドメインは2024年4月から受付開始と、最もホットなドメインです。
現在、使用できるドメインの一覧は、ICANNのDELEGATED STRINGSで確認ができます。また、現在申請中のドメインはNEW GTLD CURRENT APPLICATION STATUSで確認ができます。
いきなりgTLDや新TLD、レジストリ、ICANNなどの名称が出ましたが、それってなんだっけ知らない…と心がザワザワした方は読み進める価値があると思います。
ドメインの基礎をおさらい
上図のURLのhttps://の右側全体や、「●●●(任意の文字列)」部分だけを指して「ドメイン」と一般的に言ったりしますね。正確には.(ドット)で区切られた「www」「●●●(任意の文字列)」「co」「jp」それぞれがドメイン
です。そして一番右側がTLD(トップレベルドメイン)、その左側が2LD(セカンドレベルドメイン)、3LD(サードレベルドメイン)・・・と右から左に向かって数字が大きくなっていきます。この数字自体には特に意味はありません。これらは海外の住所表記のように「福島区.大阪市.大阪府.日本」と右側から階層が深くなる構造に似ています。
よく上図の4LDだけを指して「サブドメイン」と言ったりもしますが、本来は「co」は「jp」のサブドメイン、「●●●(任意の文字列)」は「co.jp」のサブドメイン、「www」は「●●●.co.jp」のサブドメインという関係になります。これはJPRSでも解説されています。
ドメインの種類によって、「●●●(任意の文字列)」が2LDや3LDになったり、一般的に呼称するサブドメインの位置が3LDや4LDになったりすることに注意しておきましょう。
もう一つ誤解されそうな語句として「ルートドメイン」があります。本来のドメインには一番右側に「.(ドット)」があり、すべてのドメインはこのドットが存在します。これが本来のルートドメインです。サイトによってはこのルートドメインのドットを付与してもアクセスできます(うちのサイトはなぜかできません。サーバーによるのかも)が、通常は表示されずに一般的に運用されています。なので「jp」は「.」のサブドメインとも言えるわけですね。近年では、ドメインの根幹部分を指してルートドメインと呼称することがありますが、上記の通り本来の意味とは全く違う箇所のことです。誤解を招く表現なので個人的には使わないほうがいいと思っています。一般的な仕事の会話では厳密に呼称することはないとは思いますが、口語での会話だと勘違いする場合もあるので、どこの箇所のことを指しているのか必ず確認したほうが良いでしょう。
本記事では「ドメイン」「サブドメイン」は一般的な使い方で書くことにします。
そもそもドメインって誰がどう管理してるの
TLDの管理
ドメインの一番右側にあるTLDは、ICANNという非営利の団体が調整をしています。TLDは無限にあるわけではなく、どのような物を使うのか、制定すべきかを検討しています。同組織はIPアドレスやDNS運用の助言など、インターネット資産に関わる技術やポリシー策定などを行っていいます。
レジストリ
TLD自体を管理するのが、レジストリ(登録管理組織)です。レジストリはひとつのTLDに対しひとつの企業・組織が管理することになっています。例えば.comはVeriSign(アメリカの企業)、.jpはJPRS・株式会社日本レジストリサービス、.tokyoはGMOが管理といったふうに。ただし一つの企業・団体が複数のTLDを管理していることもあります。レジストリは誰にでもなれるわけではなく、ICANNの認定が必要で、委託という形で運用されています。これらレジストリの一覧はhttps://www.iana.org/domains/root/db にあります。誰がそのTLDを管理するかは複数の会社が立候補する場合もあり、紛争になっているケースもしばしばあります。
レジストラ
我々ユーザがドメインの取得を行う際に利用するのがこのレジストラです。これらレジストラは、ユーザーに代わってレジストリが保持するデータベースに新たなドメイン等を登録してくれる事業者になります。お名前.comなどさまざまなサービスがあります。
リセラー
レジストラとユーザーの間に再販事業者と呼ばれる事業者が入ることもあります。わたしが利用しているムームードメインはこのリセラーに当たります(公式サイトにも記載があります)。
この図式を見ると、レジストラとリセラーどちらで買うべきなの?という疑問が湧くかもしれませんが、どこでも買いやすいところで良いです。というのも、レジストラとリセラーが兼任している場合もあるからです。たとえばさくらインターネットはレジストラでもあるのですが、リセラーでもあります。参考:https://faq.sakura.ad.jp/s/article/000001176
ドメイン(TLD)の主な種類
ドメインには大きくわけてccTLDとgTLDがあります。それ以外の特殊なものもあります。
ccTLD(country code top-level domain)
国別コードトップレベルドメインと言われるものです。その名の通り、国別のコードになっているもので、日本では「JP」になります。.jpの場合、登録できるのは日本国内に住所を持つ組織・個人・団体のみとなっていますが、他国では世界中に開放している国もあります。
gTLD(generic top-level domain)
ジェネリックトップレベルドメイン。分野別トップレベルドメインとも言われるもので、上記ccTLD以外と考えればよいと思います。これらドメインは比較的自由に取得できるものが多いですが、下記のように用途や分野向けに特化し、資格を満たさないと取得できないものもあります。
sTLD(sponsored top-level domain)
ドメインが特定のスポンサーによって維持される特殊なトップレベルドメインです。.gov .asia .xxx などなどがあります。例えば.museumは、博物館や専門団体、博物館の専門家・個人・博物館関連企業のみが取得でき、レジストリ であるMuseum Domain Management Association (MuseDoma)の審査が必要です。ただし現状では誰でも取得できるようになったとの情報もあり、こういったルールが変わることもしばしばあるようです。
grTLD(restricted generic top-level domains )
制限付きドメイン。たとえばGMOがレジストリとして管理する.gmoドメインは、IoTデバイスを扱う企業向けに提供される限定ドメインです(ウェブサイトにも使用できません)。2024年から使用できるmusicドメインも、音楽関係者のみの利用に限られています。上に記載したとおり、.jpに関しては日本国内の組織・個人だけなので、ccTLDもこの制限付きドメインだと解釈する人も居ます。
これら制限の内容は管理するレジストリの方針次第となっています(もちろんICANNの承認を経てそうなっています)。
特殊:国際化ドメイン名
英数字以外のドメインのことです。日本語だけでなく、各言語のドメイン名になります。たとえば「.コム」「.微博」などがあります。
特殊:使用できないドメイン
.corp、.home、.mailのgTLDは使用できません。このドメインをローカルで使用しているケースがあり、一般的に使用できてしまうとスパムの対象等になってしまうなどの対策から使用中止を決定したそうです。詳しくは調べてみてね。
特殊:.arpa
一般的なウェブサイトに使用できるドメインではなく、IPアドレスからホスト名を調べる用途などに使われるそう。これはよくわからん。
JPドメイン
このブログを読んでいる方はほぼ日本在住だと思いますが、一番お世話になるのがこのJPドメインではないでしょうか。JPドメインにはさらに大きくわけて三種類あり、「汎用JPドメイン名」「都道府県型JPドメイン名」「属性型・地域型JPドメイン名」があります。
汎用JPドメイン名
任意の文字列を使用できる.jpドメインです。一番使用すると言ってもいいでしょう。日本国内に住所を持つ人なら誰でも取得可能です。
都道府県型JPドメイン名
2LDに都道府県名が入ったドメインで、3LDに任意の文字列で登録できるドメインです。こちらも日本国内に住所を持つ人なら誰でも取得可能です。あれっ?それなら大阪市福島区ならfukushimaku.osaka.jpも取れるの?と思いますよね。残念ながら、3LDに各市町村が入ったドメインは予約ドメインとしてリストアップされており、登録ができません。リストはこちらの都道府県型JPドメイン名における予約ドメイン名リスト(市区町村名)で確認できます。
属性型・地域型JPドメイン名
特定の資格や団体のみが使用できるドメイン群です。例えばCO.JPは会社組織のみ登録、ac.jpは高等教育機関および学校法人などが登録、ed.jpは初等中等教育機関および18歳未満を対象とした教育機関が登録、といったなんらかの資格が必要です。基本的に1組織1ドメインとなっています。
.jpドメイン取得に関する注意
JPドメインは登録者の身元表示が原則です。公開される情報としては「公開連絡窓口」「登録者名」「登録者名(ローマ字)」の3項目になり、Whoisで検索すれば情報が表示されます。この記事をここまで読む方でWhoisを知らないなんてことはないと思いますが、例えばJPRSのWhoisはこちらです。https://whois.jprs.jp/
公開連絡窓口
ドメインの連絡先として表示される情報です。基本的にはドメインを取得した人の情報がそのまま表示されますが、多くのドメイン取得サービスにおいては代理表示が可能です。たとえばムームードメインで取得した場合はGMOの会社情報を代理で表示させることができます。意外にこの設定を忘れていて住所が丸見えになっている方もいるとかいないとか。
登録者名
この名前だけは隠すことができません。嘘偽り無く申告する必要があるため、正しい名前で登録する必要があります。ただし企業や団体で取得した場合は、この登録者名は企業名にすることができます。
それでも隠したい場合
ペンネームで活動している作家さんなど、場合によっては登録者名の表示は好ましくないこともあるでしょう。登録者名は原則表示ですが、隠す方法あります。それはJRPSの非表示機能を利用することです。機能の詳細はこちらのページに記載されています。ただしレジストラが対応していないと意味がありません。現状ではXドメインがこの機能を利用でき、ゴンベエドメインもおそらくこの機能を利用したガードサービスがあるようです。
ドメイン関連の雑学
次の新gTLD募集は2026年くらいらしい
上で紹介してきたmusicドメインやkidsドメインなどは、過去にICANNが新しいgTLDを募集し、その時に申請されたものになります。2000年、2003年、2012年の三回募集が行われており、「新gTLD」という名称は概ねその募集時に申請されたものを指しています。なんか新しいっぽい名称でややアバウトに使われていることも。
長らく新gTLDの募集はなかったのですが、2026年くらいに募集がありそうというニュースも出ています。会社のサービスや名称等でドメインを作りたい方は検討してみてもいいかもしれませんね。ただし申請だけで3000万円くらいかかります。
ドロップキャッチ
ドメイン名が更新されなかった場合、すぐに再登録が可能となるわけではなく、 一定期間登録ができない状態に置かれた後、再び先願による登録が可能な状態となります。 この再登録が可能になる瞬間を狙って、 目的のドメイン名を登録しようとする行為をドロップキャッチと言います。
引用: JPNIC https://www.nic.ad.jp/ja/basics/terms/dropcatch.html
私はよく目にするケースは、新作映画で独自ドメインを取得するケースです。映画の上映終了後はほぼ活用されなくなるため、ウェブサイトクローズとともにドメインも破棄。その後悪用者がドメインを取得するという流れです。映画のウェブサイトはメディアや映画紹介などでリンクを貼られるケースが多くあり、一定の流入が見込めるというわけです。こういった則り行為は、NTT domomoやコロナ関連サイトなどあらゆるサイトで行われており、そのたびにニュースになります。
企業や団体が新規にドメインを取得した場合、サービス終了後も数年(もしくは永遠)もドメインを保持し続ける道義的責任が問われる時代になっています。それは本当に新規ドメインでする必要があるか? サブドメインではダメか? 同サイト内のサブフォルダでコンテンツが展開できないか? は十分議論したほうがいいでしょう。SEOや費用の観点からすると、さっさとサブドメインで運営しちゃったほうが良さそうな気もしますけどね。
ってことでドメインを再勉強してみました。
備忘録として残しておきます。